2007年05月11日

ルーシーダットン商標権問題、3月30日付けで取り消し決定

 昨年5月27日付けで本ページで取り上げましたタイ式ヨガとも称される「ルーシーダットン」の商標登録が日本国内で行われていた問題に関して、タイ商務省知的財産局からの異議申し立てに基づき日本の特許庁側が本年3月30日付けで商標の取り消しを決定し関係者に通告していた事が明らかになっています。

 この問題に関してタイ商務省知的財産局側は異議申し立ての中で、

・ラーマ1世の治世時に行われたタイ国内に点在していた医学知識の収集対象にルーシーダットンが含まれ、更にワット・ポー(ワット・プラチェトゥポン)建立時にルーシーダットンのポーズを模した像を作成し国内に広く普及させようと試み、その後ラーマ3世が一部損壊していたルーシーダットンの像に替わる像を新たに製作すると共に、用法に関する解説を表した詩を刻んだ石碑を設置し普及に貢献していた。

・ラーマ1世や3世により一度は体系づけられ国民に周知されていたルーシーダットンは、その後設置された像や石碑の多くが破損、盗難等にあうなどの事情により一時資料が散逸し、本来の型や効能等が不明になるという事態に陥ったものの、その後タイ政府は1993年から2004年までに渡る伝統医学知識復興プロジェクトにより、散逸した知識を再収集し再度体系化させると共にトレーニングコースの開設や書籍の出版、博物館における模型の設置、イベントの開催や普及促進グッズの販売等により再普及に努めている。

・タイ政府はルーシーダットンを含むタイの伝統的医学知識を貴重な知的財産と位置づけ、保護・普及を目的とした伝統的医学知識の保護及び促進に関する法律を1999年1月1日に公布している。

・ルーシーダットンは、タイ及びタイ国民の間で大切に守られてきた伝統的医学知識の一つとして、国王・政府が復興、普及に努めてきたきたタイ及びタイ国民の文化的遺産であると判断されるべき。

とした上で、商標登録者が日本国内で商標登録がされていない機会を利用し利益機会を得る目的で商標を出願し登録を得た行為は、タイ及びタイ国民の尊厳、国民感情からみて国際信義に違背する恐れがある穏当ならざるものであり、また、このような行為に基づいて登録された商標を商標権者が独占して採択、使用することは公正な取引秩序を阻害するおそれがあると主張。

 一方、商標権者側は意見書の中で、

・ルーシーダットンは、タイ国内の限られた地域の者が知っている程度の全国的に周知されたものではなく。また自己整体法を意味するものと認知されていない。

・商標権者は100以上の講座等を通してルーシーダットンの普及に努め「タイ式ヨガ」として周知著名にしてきた。

・商標権者が普及活動により周知著名にし、慣れ親しまれてきた語句の保護を求めて出願したものであり、利益機会を得るために登録したものではない。

とした上で、今回の商標登録がタイの国民感情に反するとの認定は、仮想的前提に基づく証拠のないもので、また一地域に古代から伝承する自己整体法という概念も、タイ全体で認知されていない一般タイ国民の文化感を構成しているとは認めらず、タイ全体の文化的遺産という認定は過大拡大な解釈で、国際信義に反するとは言い得ないと主張。

 両者の異議・意見を受け特許庁側は、

・タイ国王が国民の健康維持の為に伝統的な医学知識を体系化し普及に尽力し、その後政府が法律を制定し復興・普及に努めている。

・また、ラーマ3世が設置した石碑や像に、ルーシーダットンはタイ及びタイ国民の歴史的遺産であり特定の者に対して与えられものではないとの記述があると共に、タイ政府側が法律を制定し保護・普及に努めている。

・立憲君主制であるタイ国民の国王や王室に対する畏敬の念を考慮しても、タイ及びタイ国民の公共の文化的な財産というべきものである。

とした上で、商標権者側に登録出願した意図に悪意が無かったとしても、タイと関係を有しない又はタイ国民でもない商標権者が、在籍していたワット・ポー・トラディッシュナル・メディカル・スクールに無断で商標権を得た行為は、客観的にルーシーダットンの普及活動の為に海外から多数の研修生を受け入れているワット・ポー・トラディッシュナル・メディカル・スクール及びタイ、タイ政府との信義誠実の原則に反し、且つかかる商標を日本国内で登録する事は日本とタイとの国際信義にも反すると判断し、今回の取り消し決定となったようです。

 尚、本通知の原文は特許電子図書館のHPから、ルーシーダットンの原商標登録番号である2005−024952、2005−024969で参照可能なようですが、10日現在まだ掲載されていないようです。

 また、本件についてタイ商務省知的財産局に引き継がれるまでタイ国政府観光庁と一緒に動かれ、また、詳細な経緯を私宛にお教え頂いたタイ古式セラピースクール・ロイクロ日本校代表の岩原様のページでも本件に関する経緯を参照する事が可能です。

 このページを借りて詳細な経緯情報をご提供頂いた岩原様に感謝の意を表させていただきたいと思います。



posted by Jean T. at 02:00| 政治経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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